all night long ~ 後編1/2

足下に広がる床は、天井の照明をそのまま落としたように、白く光っている。受付のカウンターや個室の扉には、黒に近い褐色の木目があしらわれていて、ちょっと贅沢な気分にさせてくれる。真昼を思わせる廊下から、左上に「26」と記された扉を開けて中へ・・・そこには、四人にしては、十分過ぎる空間が待っていた。間口よりも奥行きがある造りは、テーブルが二つ、一列に並べられている。テーブルをはさんで正面に大きな液晶画面とスピーカー、十人が入っても騒げるほどの広さだ。紅色のビニールシートに包まれたイスが、壁際に沿って“コの字”に巡らされている。その上に、荷物と上着をさっと放り出し、四人揃ってソフトドリンクとアイスクリームを取りに部屋から出て行った。

前にmayuちゃんと行ったときには使いこなせなかった“多機能”リモコンも、今ではすっかりお手のもの・・・何をどうすればよいのか訊くこともない。ひとえに歌トモのおかげだ!この歌トモとワタシは同年代。なのに、不思議と歌がかぶらない・・・たとえ同じアーティストでも、必ず違う曲を選ぶほど、音楽の趣味は真逆だ。一緒になるのが初めての二人とは、“ひと回り”も年が離れているし・・・今宵も、気兼ねすることなく、好きな曲を好きなだけ歌えそうだ。この日のために“Excel”に入力しておいた「セットリスト」から一つ目の曲を入力する。曲名「情熱の薔薇」・・・もちろん、歌うのは今日が初めて。聴き込んではいるけれど、うまく歌える保証は・・・ない。

<続きは後編2/2で>