all night long ~ 後編2/2

正面のライブ映像を目で追いかけて、マイクを口元に声を張る。左右のスピーカーの真ん中辺りにいるから、カラオケも自分の声も均等に聞こえて・・・音響は申し分ないどころか、申し訳ないぐらいだ。DAMのカラオケも、原曲に近い迫力があって、ワタシの好み!まあ、そんなものに助けられて、気分良く先頭を飾ることができた。こうなると・・・あとは四人、律儀に順番を守りながら、交代で歌うは歌うは・・・気がつけば、部屋の内線がプルルと音を鳴らし、液晶の左隅に、退室の時間が迫っている案内が表示されていた。四人が一瞬だけ顔を見合わせると、入口に一番近いところに座っていたsuzukiさんが、フロントへと向かう。「二時間延長」・・・途中、セットリストには無かった曲を入れていたから、“課題曲”はたくさん残っている。臨むところだ!

好きな四人が揃えば、六時間すらあっという間だった・・・。会計を終えて、1階に降りていくと、まだ日の出にならない空は、明るくなるのを拒むように土砂降りの雨を降らせていた。二本のワイパーが、フロントガラスの雨を振り払っても、すぐに景色がにじむ。歌トモを印西に降ろして、アスファルトに川を流す雨の中、残りの二人を、北総線と京成線の駅へと送り届ける・・・お題に据えた“All Night Long”ではなく“Kill The King”を叫び、三人とも聞き覚えのある“I Was Made For Lovin’ You”を選んでKISS ARMYのメンツを保ち、“Mr.”のスンヨンちゃんには目を奪われて・・・国道16号線の上で、そんなことを思い出していると、ゆっくりと空の灰色が深い青に変わって、街の輪郭が浮かんできた。江戸川を越えれば、帰る家はもうすぐ。がさついた喉が、無邪気な夜を伝えていた。