優柔不断な朝に

「やっぱり半谷にするか・・・」。隣のベッドに放ってあった携帯に手を伸ばして、うっかりすると二度寝してしまいそうな音色の目覚まし音を止める。上半身を起こしながら、ベッドから這い出ると・・・掛け布団がはだけていたのか、背中が冷たくなっている。昨夜、眠りにつくまでは、この週末「ちょっと足を延ばして」榛名のコースに行くつもりだったのに・・・少し寒くなっただけで、このざまだ。年を追うごとに、暗く冷たい朝が苦手になっていく。まだ週の真ん中だというのに・・・情けない。階段を下りて、リビングの扉を開くと、コーヒーメーカーがゴボゴボと音を立てている。湯気に包まれたその響きは、今朝の空気によく合っている。

小菅の駅を出て、日比谷線の車両が、荒川を渡る。陽光が川面に砕けて、細かくきらめいている。陽射しの軌跡もだいぶ立ち上がって、仕事場が近くなってきた。北千住からは、上野行きの常磐線快速電車に乗り換えだ。右手でつり革につかまって、隣を走る線路に目を落とす。鉄輪に磨かれた表面が、二筋の光りになって、同じ速さで追いかけてくる。ガラス越しの白い光りは腰に停まり、そこだけがふんわり暖かい。三河島駅を出ると、次は日暮里。正面に見えるステーションガーデンタワーが近づいてくる。薄い黄色の外壁が、澄んだ青に浮き立つ。どうせ着替えを始めるのは、この時間になってから・・・「やっぱり榛名にしようかな」と、揺れる電車に思いも揺れる。あと二日、ぐずぐずと悩むか・・・。