11月3日の朝~3

「寒いか?」うっすらと下の方から、フロントガラスが曇ってきた。「んんー、ちょっと冷えるね」このところ、朝は冷え込む。おまけに頼みの太陽も、雲の向こうに隠れたままでは・・・風を受ける透明のガラスは、冷たくなるばかりだ。ただ、すぐにも給油ランプが点灯しそうなぐらい、ガソリンの残量が心許ない。しかたなく“AC”のスイッチを外してから、フロントガラスの内側に風を送る。思ったとおり、目の前がさらに白くなってしまう・・・「エアコン、入れないとまずいかなー」この先、取手を過ぎるまで・・・ガソリンスタンドは無い。

「ミライース、まだ売ってないのかねぇ」赤く“ダイハツ”の文字が入った看板を掲げる建物が、すぐ右横を流れていった。「売れちゃって・・・無いんじゃないの?あっ、タイの洪水にでも流されたのか・・・」展示してあるクルマじゃなく、真っ直ぐ前を見て答える。二人して気に入っているテレビCMのひとつが、このミライース。クルマの出来もホンダの社長が絶賛するくらいだから、“ニュース”な走りに間違いは無いのだろう・・・形だけは薄い印象だけど・・・。

国道16号線と並行して走る県道を左に曲がる。「これから・・・ツーリングには厳しくなるんだね」セブンイレブンの駐車場にスクーターを停めて、缶コーヒーをすする男を見つめながら、ryoがつぶやく。「季節はいいけどね」朝と晩、とくに日が暮れているのに走る距離が3ケタ以上も残っている時は・・・寒さ以上に気持ちがもたない。雨など降ろうものなら、宿を見つける度に泊まりたくなったものだ。相変わらず外は冷たい空気に満ちていて、エアコンを入れないと危ないくらいにフロントガラスが白くなってきた。

<次回に続く>