11月3日の朝~4

利根運河を渡ってすぐ、利根川沿いの農道へと、県道を左に折れる。ひさしぶりな感じがしないのは、先々週に仕事で通っていたから。土手の上を短く走って、右に曲がり、とても柏市とは思えない田圃の中に降りていく。程よい温度で、隣はまぶたが重くなってきたようだ。途切れた会話を、つぎはぎだらけのアスファルトがガタガタと埋めていく。気がかりなのは、ガソリン・・・点きっぱなしの橙色のランプ、視線は、前方に延びる灰色の一本道と燃料計の間を行ったり来たり・・・ハンドルを握る手のひらが、うっすらと湿ってきた。

はるか前方、真横に引かれた国道6号線が見えてきた。静かに息を吐き出そうとした瞬間、激しく唸るような排気音を残して、緑色のバイクが、列になったクルマの塊を、Bongoもろとも一気に抜かしていった。カワサキのニンジャだ。見る間に小さくなって農道を出ると、左に曲がって駆けていく・・・「面白いぐらい・・・速いな」轟音に目を覚ましたryoが、小さな緑の影を見送っている。「ニンジャか?」「そうだな」短く言葉をつなげて、農道から国道へと上がっていく。利根川にかかる鉄橋を、取手終着の常磐線がゆっくりと渡っていた。

川を渡ると、すぐに国道から離れて、取手の市街地に入る。さっき並走していた常磐線が、高架の上で、もっさりと動いていた。ここまで来てようやく、ひと月ぶりの感覚になる。スーパーともホームセンターともつかない、聞いたことのない名前の大型店舗が、工事中だった空き地に出来上がっていた。あと少しで新規開店なのだろう、内装業者のバンが駐車場に散らばっている。気がつけば、燃料計の針が“E”の線を越えようとしていた。川沿いなのに起伏があって、踏み込まないと上っていかない。ACのスイッチを切って、アクセルペダルに右足を添えてやる。

<次回、最終話?!に続く>