11月3日の朝~終

「いつものトコロまでは持たなかった・・・と」歩道の段差を乗り越えてガソリンスタンドに入ると、ryoが口を開いた。いつもなら突っ切っていく交差点を、左に曲がったところにあるガソリンスタンド。これで、途中で止まってしまうこともない。境橋から真っ直ぐ龍ヶ崎に続く県道は、MX408に通い始めた頃に使っていた道。ガソリンを入れ終わって、今ではすっかり走らなくなったアスファルトの上・・・「こっちから行ってみるか?」「なつかしいね、いいんじゃない」と、片側二車線の伸びやかな道路で、龍ヶ崎の街にハンドルを向ける。緩く右に曲がったところに在ったコンビニは、外壁のタイルだけがそのままだった。

本場中国の“味”よりも、大抵の人を満腹にする“盛り”が記憶に残る「百香亭」。信号は青、ウインカーを右に出して、その角を曲がる。手の込んだアルバム『Destroyer』が終わって、クルマの中、『Rock And Roll Over』からディストーションの利いた曲が流れている。曲は“Take Me”、リードヴォーカルのポール・スタンレーが、のっけから過激で卑猥な歌詞を叫ぶ。日本語だったら・・・とてもじゃないけど口ずさめない内容だ。早朝の商店街に沈んだWESTWOODの前を通り過ぎ、いつものセルフ式ガソリンスタンドを左に回り込むようにして、先を急ぐ。なのに、直線の先は赤信号。T字路のミニストップも、朝の待ち合わせに使わなくなってしまった。

渡る人もほとんどいない横断歩道に、ゆっくりとBongoが近づいていくと・・・左からミニモトを一台積んだキャリーが交差点に入ってきて、視界の真ん中を走り始める。KTM85SXを確認するまでもない。「あっ、uchinoさんだ」と、二人で顔を見合わせる。ドアに社名の書かれた業務用の軽トラックにミニモトの組み合わせは、出会った頃のまま。KX85ⅡがKTM85SXに出世しただけだ。「変わらないね」と、ryoが笑う。ウチらは、少し贅沢になってしまったのかもしれない。信号待ちで、ぴったり後ろに着けると、運転席側のドアミラーに映り込むように、右手を小さく振ってみた。ミラー越しにこちらを見て、uchinoさんが手を振り返す。

師匠の登場に、助手席のryoはご機嫌だ。空がひび割れたように、うろこ雲の隙間が薄くなって、光が差し込んできた。そのまま二台が連なって、コースの入口まで・・・見慣れた受付の後ろで散水車が、コースの上に、放物線を落としていた。走行申込書を挟んだボードをひとつだけ手にしたsaitoさんが、あわててもうひとつボードを取り上げる。その笑顔のずっと奥に、ワタシの師匠がハイエースを停めていた。