まるで新品!?~後編

そのうちの一本、駅を背にして線路と直角に延びる道を選んで、歩き始める。ひときわ幅の広い道には、薄暗い歩道をぼんやりと照らすイルミネーションが、背の低い街路樹に巻かれていた。途中、イタリアの国旗をかざした落ち着きのある構えの店があって、宵の空腹に思わずガラスの扉を開きそうになる。クルマの通りも無く、店の灯りだけがほのかに歩道のタイルを染めていて、知らない街の風が頬を触っていく。

産業道路に出ると、クルマが主役に戻っていた。店の灯りとは比べ物にならない、強烈な光が、低く往来している。数分ほど大宮方面に歩くと、黒く「KUSHITANI」と書かれた看板が、漆黒の空に白く浮かんでいた。店は二階建て、一階はバイクショップになっている。店の外には、フレームにエンジンとガソリンタンク、二つのタイヤだけが付けられた、赤いヤマハのマシンが佇んでいた。自動ドアをくぐり、すぐ左にある階段を、二階へと上がっていく。

階段を上りきると、店長が一人、カウンターで革の仕立をしていた。頼んでいたカントリージーンズを取りに来たことを告げると、作業の手を止め、棚からビニール袋に入ったパンツを取り出して、カウンターの上に並べてくれた。しっとりした感触が伝わってくるような、濃いインディゴブルーに染められたジーンズ。染料が白く飛んでいたひと月前の姿からは想像できない、深い艶だ。ビニール袋を手に取ると・・・しんなりと二つに折れる。これでまた、来年の夏が楽しみになった。