二度目のMCFAJ 7

スネークに二つある大小の坂は、横すべりを誘うこともなく、リヤタイヤの回転をしっかり受け止めてくれる。コース中、一番苦手にしている鋭い右コーナー。長い上りに続いたワダチにも、今日は相性が良いようだ・・・いつもなら“一旦停止”してから上る坂も、ワダチに沿って流れるように立ち上がっていく。下りの斜面の上には、人の列が連なっている。下りきる手前、ちょうどコブに向かって車体を左にねじる辺りに、uchino師匠が立っていた。照れ隠しに軽くリヤを振って、最初のコブを跳び上がる。

ギヤの入りが悪くて、ホームストレートで苦しげに悲鳴を上げるRM。それでも前だけを見てコーナーを回り、夢中になってアクセルを開けて・・・いつものMX408じゃあ、こうはいかない。極上の赤褐色に、頬もゆるむ。今日は「転ばない」、そう思えた・・・このままずっと、ずっと走っていたい・・・そんな気分だ。気がついたら、周りに誰も居なくなっていた。明るい陽射しが、少しずつ路面を薄い茶色に乾かしていく。“いつも”のスタッフとは違う、MCFAJの係員がチェッカーフラッグを片手に、コース脇に立っていた。

レースじゃないから「L-1」が出されるわけじゃないけど、走行時間の残りは、あとわずからしい。最終コーナーのバンクから勢いをつけて、スターティンググリッドの先に跳び下りる。体は座ったまま、左脚を前に突き出して・・・自分に酔えそうなほど気分がいい。着地してすぐ、右ひじを下げながら、「カチッ」と止まるまでスロットルワイヤーを引っ張る。後ろ下がりのRMが路面を蹴りつけて、第一コーナーに迫る。走り続ける耳の奥で、ポールとジーンの声が聞こえてくるのは、ひさしぶりだ。ご機嫌な一人だけの世界に浸っていると、誰も居ないはずの肩越しに、何やらうごめいていた。黒地に白いゼッケン“1”が見える。緑色したマシン・・・後ろから詰めてきたのは、ryoだった。

<次回に続く>