冬の気配

狭い田んぼ道が続くのに、一体どんな腕前の運転手なのだろう・・・全体を真っ赤に塗り上げられた超弩級のトレーラーが、パドックとコースの間、洗車場の前に横付けされていた。明日の“祭”で主人役を務める、IAライダーの増田一将。その彼が招いた巨体には、真横に大きく“HRC”と青く刻まれている。跳ね上げられた後部の扉から覗く荷室は、上下に仕切られていて、上半分に乗用車を一台、下半分にはホンダのモトクロッサーを10台ほど呑みこんでいる。光を浴びた鮮やかな朱色をスターティンググリッドの前で眺めていると、フルサイズマシンがチェッカーを受けて、ぞくぞくと戻ってきた。どれもこれも顔見知りのマシンばかり、20分の烈しい走りを労って、一人一人に手を上げる。そんな中、フィニッシュのテーブルトップを跳び出し、空中で左に車体を捻るCRF250Rが見えた・・・#218をまとうのは、“無冠の帝王” shinくんだ。車体を戻して危なげなく着地、最終コーナーをゆっくり回って、シングルジャンプの上に出てきた。手を振るワタシを見つけると、コース出口を素通りして、真っ直ぐこちらに近づいてくる。シートの上で伸びた背筋が、走りに合っている。

<続きは次回>