あみプレミアムアウトレット 4

「あの親子連れ・・・ほら、小さい子とお父さんとお母さんと、三人でよく来てたじゃない?今日は居ないの?」パドックをすき間なく埋めるトランポと、消音しきれていない4サイクルマシンの排気音・・・そんな喧噪から逃げるようにして、奥の方にひっそりと軽トラックを停める。隣にテントを立てるのにも、勇気を奮わなければいけないような空気が流れる朝。そんな“新参者”を、いつも温かく迎えてくれたtokuさん親子も、すっかり見なくなっていた。“池ポチャ”からずっと可愛がってもらっているokano師匠も、しばらく顔を見ていない・・・もちろん、いつも横にいたmuraが遅れてくることもない。「全然見ないよ・・・やめちゃったのかな?」うつむき加減の背中に、やわらかく声をかけると、下を向いたまま、パドックの小石を蹴飛ばしながら歩いていった。

ともあれ、感傷に浸るkeiに付き合ってもいられない。黒光りした日陰はあまり楽しくなさそうだけど、走れるのはお昼まで・・・とにかく時間がない。“速乾”の白いTシャツを着込んでからジャージをかぶり、RMのエンジンをかける。新品のエアクリーナーエレメントが吸気抵抗になっているのか、それとも単に気温が低いだけなのか・・・目覚めたケースリードバルブ式の2スト85ccは、右手の動きほどには吹け上がろうとしないで、真っ白な煙を、小さなサイレンサーの口から拡散させている。弱い風が、ゆっくり押し流していく様は・・・映画『汚れた英雄』の一場面を観ているようだ。いつまで待っても煙は白いまま、向きになって全開を数回くれてやっても・・・いくぶん白が薄くなったかな?という程度。仕方なくヘルメットをかぶり、全開と半クラッチを組み合わせて、パドックを抜けていく。こんな走り方をしても・・・いつしか文句を言われなくなっていた

<いよいよコースへ・・・続きは次回に>