“7200秒”の中華三昧~後編(完)

フリッターの皿を空にして、“締め”の炒飯を平らげると・・・もはや畳から立ち上がることさえおぼつかない。東北にツーリングした時、わんこそばに挑戦したあげく、RGV250γのハンドルに手が届かなくなったことを思い出す。まったくだらしなく、這うようにして部屋を出る五人の男たち。ただ、笑いが絶えることはなく、会計している間も「まだ寿司なら入るね」と馬鹿な台詞を吐いては、いきなり笑いだす。これで一人2400円は破格と言うしかない。そんな思いとは裏腹に、「しばらく中華は無いね」と、ふくれた腹を擦りながら、暗く冷たくなった路地を、光の集まる方へと歩いて行く。

晴海通りを、来た時とは反対方向に進んで、一番近い日比谷線「東銀座」の駅に向かう。へそを上に歩く様は、年格好からも「呑んだ時だけ社長さん」の昭和のサラリーマンそのものだ。大きな通りを一つまたいで、幹事を真ん中にした三人組と、地下鉄の入口で別れる。遠くに見える有楽町のネオンに負けてしまいそうな、薄暗い照明のなか、細い階段を下りていく・・・まだ水曜日、明日も仕事だと思うと、きつくなったお腹のせいではなくても、足取りが重くなる。まさかこの後、30時間以上も食べ物を口にしないとは思いもしないで・・・下りの日比谷線を、狭いホームに並んで待っていた。