“本気”で初走り 3

さっき走ってきた坂道を、太陽に向かい下りていく。下りきったT字路。黄色から赤に変わる感応式の信号の下を、ろくに減速もしないで右に勢いよく曲がると、空になった荷室で、アルミのハシゴが左側のスライドドアに音を立ててぶつかった。走る前に、どうしても欲しいものがあった・・・急いた心が、アクセルペダルを踏む右足に、さらに力を込める・・・。

シャッターが上がって、色とりどりのスクーターが、通りに向かって並んでいる。右にウインカーを出して、がらんとした駐車場を想像しながらハンドルを切ると、開店直後だというのに、もう4台ほどクルマが停まっていた。正面のガラス戸からは明るい店内が覗いている。左手で戸を引いて、そのまま右に大股で歩いていく・・・狭い入口の先、レジの横で迎えてくれたのは、変わらぬ笑顔のkubo-chanだった。

「アレ、買うから・・・早くカード作って!」年の初めの挨拶もそこそこに、大きな声を出す。買いに来たのは・・・足りない部品でもなければ、壊した部品でもなく・・・ウェアの特別セット。その名も“本気ライダー応援セット”。「モトクロスが大好きな本気ライダーを“お得なウェアセット”で応援します」という“売り文句”にほだされた訳ではなくて・・・「購入後も続く、仰天特典付き!」の“特典”、つまり“おまけ”が欲しかったわけだ。

選んだのはTHORのPHASEセット。メッシュ仕様の“Amazon”は、ざりぱぱと色違いの赤にしてみた。「poisonでもいいかも」ryoが、そう表現する。まあ、毒を持った爬虫類の皮膚に見えなくもない・・・「いかにも」といった感じが、アマゾンらしくて雰囲気だ。ただ、目当てはウェアじゃなくて、あくまで“おまけ”・・・“魔法の券”を2500円も安く買える“プレミアムカード”が、それだ。今はこれがあれば十分。セット内容を揃えて倉庫から戻ってきたkubo-chanに、早速“おまけ”を用意してもらうと・・・“魔法の券”を片手にBongoへ乗り込み、急いで駐車場を後にする。

<つづく>