“本気”で初走り 5

RMよりも高い位置に、キックペダルが伸びている。思い切り膝を曲げて持ち上げた右足が、不規則に痙攣する。動かすつもりのない親指が自然と上に反りかえってきて・・・足がつりそうだ。それでも地面に向かって、何度かペダルを踏み下ろしていると、ボボボボッとエンジンが鈍く音を吐く。少し待つ間に、チョークレバーを引いたままの4ストロークは、一段階太い音を連続してサイレンサーから響かせるようになる。チョークレバーを戻しても右手の動きに従順になるまで、黙って横に立ちつくす。自分で奏でる重低音は・・・傍で聞かされるよりも、腹に響く感じが気分良かった。

軽い動きのクラッチレバーを握って、シフトペダルを踏み込む。ガツンと緩い衝撃が、車体を震わせた。もう一度踏み込んで、シフトペダルが動かないことを確認してから、右手と左手で違う動きを、均等にやってみせる。チェーンとリヤタイヤが回り始めた瞬間、いきなり車体が動き出そうとして・・・フロントタイヤがBongoにぶつかりそうになった。RM85Lとは異質の、4ストエンジンらしい反応に面食らって、思わず右手を戻してクラッチレバーを握る。今度は遠慮がちにスロットルグリップを回して、静かにクラッチレバーを離してやる。シートにつけたお尻を押し出すようにして、CRF150RⅡが加速を始めた。一瞬、体が後ろに置いていかれそうになったのが、CRFのせいなのか、正月休みで鈍らになったせいなのかは・・・よくわからなかった。

<つづく>