“本気”で初走り 7

ryoと入れ替わるように戻ったパドック・・・ちょうど斜向かいに、灰色のcaravanが停まっている。harada師匠だ。今年の相棒は、新車と見紛うばかりのKTM125SX・・・同じ土俵で走れないのが少し寂しいけど、「赤いのに乗ってたみたいだけど?」と変わらず気にかけてくれているのがうれしかった。RMの整備が終わるまでのつなぎ、借り物なんだと話すと、「ずいぶん贅沢な話だ」とからかわれる。「視察に行くよ」と言っていたiguchi師匠の方は・・・まだ到着していなかった。

それほど汗もかいていないし、喉も渇いていない・・・。ジャージから覗く首筋には、強く陽射しが当たる。風が落ち着いていて、スネークヒルの斜面にマシンの排気音がこだまする・・・軽く口に含んだスポーツ飲料を呑み込んで、machi-sanに誘われるまま、抵抗のあるCRFのキックペダルを踏みつけた。だいぶ聞き慣れてきた野太い音が、ヘルメットの隙間から鼓膜を揺さぶる。心地良い痺れと一緒に、コースの入口へと走っていく・・・スターティンググリッドの後ろ、細く短い誘導路が白っぽく光っていた。

20kgも余計な体重を支えるため、#357のCRF150RⅡには、前後に標準よりも硬いばねが仕込まれている。「サグ」を合わせていない車体は、ワタシが乗ってもryoが乗っても、ほとんど沈み込まない。車重の違和感よりも、右手と連動した加速に馴染み出したのを見計らったように、リヤタイヤが大きく右に滑る。縮まないばねが、駆動を逃がしていた。予期していなかった挙動に、かろうじて左足が反応する。スネークの左コーナー・・・均衡を崩すCRFの内側を、ryoのKXがすり抜けていった。

<つづく>