1991 Hockenheim~4(終)

あれから、一週間・・・。ケビン・シュワンツ奇跡の走りが、今、手の中にある。『1991 ドイツ決選 完全ノーカット版DVD』がそれだ。取り出した虹色のディスクを、フロントローディングのトレイに載せて、リモコンの再生ボタンを押す。当時のテレビ放映そのままのカット割りに、実況と解説。後ろに流れる旋律も少し古びていて、10年の時を感じさせている。それが、余計に気分を高揚させ、平均時速200km超えの世界に引き込まれていく。“6強”の一角、ウェイン・レイニー vs ケビン・シュワンツの一騎打ちが始まって間もなく、訪れた最終ラップは・・・結末がわかっていても、つい身を乗り出してしまう。チェッカー前、最後のシケインを前にして、レイニーがシュワンツをかわす。「終わった」と誰もが思った次の瞬間、#34のRGV500γがYZR500の後ろから右に出て、そのまま真横に並びかける・・・「無茶だ、転ぶ!」、リヤタイヤは大きく左右に揺れて、フロントタイヤもよれている。レイニーの姿がなければ、オイル痕に乗り上げた感じ・・・転ばなくても、まともにシケインを曲がれないはずだったのに・・・当のシュワンツだけは違っていた。コーナー手前、ぎりぎりまでマシンをふらつかせながらレイニーのイン側に並んで、そのまま右に車体を寝かせる。一瞬、レイニーの方にヘルメットを向けると、次の左コーナーには先に入っていく・・・リヤタイヤが跳ねてもスロットルを開け続け、最終の右コーナーからフィニッシュライン。ちょうど車体一台分の差で、シュワンツがレイニーよりも前でチェッカーを受ける。思わず握りしめていた両手を、ゆっくりと開くと・・・黄色っぽく変色した手のひらに赤みが差して、血の気が戻ってきた。

うまくはいかなかったけど・・・イバMOTO最終戦で見せたryoの走りが思い起こされる。父として息子に教わることなど無いと思っていたのに・・・あのときの走りは、今でも鮮明だ。アノ闘志だけは、見習うべきかもしれない。「こちらは全部組み上げました。いつでもOKです」どこかで見ていたかのように、iguchi師匠からメールが届いた。昨日に続いて今日も、家で過ごしたおかげで・・・RM85Lは、だいぶ形になってきた。DVDの中に入っていた“新作案内”のはがきを、折り目をきちんと付けながら、紙飛行機にしてみる。こたつから飛ばしてみると、左右にふらふらしながら、窓際に向かって飛んでいった。“一騎打ち”が・・・今から楽しみだ!