これがホントの走り初め 2

タイダウンベルトのたるみを気にしながら、最後の曲がり角を下っていく。前を走っていた銀色のハイエースも、行き先は同じようだ。T字路で一時停止、死角になった左側からのクルマに注意を払ってから、下ろしたウインカーにならってハンドルを右に切る。たんぼ道から見慣れた坂をうかがうと・・・しっとりと茶色に染まっていた。ひさしぶりのMX408は、どこか静かな雰囲気だ。「RMで上手く走れるかな?」ひさしぶりの愛機に不安がよぎり、ちょっとだけ気分が悪くなった。

「ダメだよ、サボっちゃあ~」ほとんどひと月ぶりに見るTHORのライディングジャケット。開け放した窓に飛び込むsaitoさんの一言で、それまで震えていた気持ちがすっと落ち着いた。走行申込書と一緒に“本気ライダー”の「証」も差し出して、「一ヶ月券で」と添える。この時間、いつもなら先に着いているはずのiguchi師匠だけど、今日はまだみたい。藍色のハイエースも見えなかった。関東選手権の練習に来ているのか、知らない顔とゼッケンが、パドックに散らばっている。そんなアウェイな空気を吹き飛ばしてくれたのは・・・ざり家のcaravanだった。

「体、大丈夫?」先週は、サボったわけじゃなくて風邪で大変だったことを知っているざりままから声が掛かる。「今日、息子は?」マシンは二台持ってきたけど・・・乗るのは一人だと笑うと、桃色の包装紙にくるまれた小箱を二つ、胸元に差し出してきた。バレンタイン、しかもmachi-sanに続いて、二番手と三番手らしい!“義理”だとわかっていても、この時期にチョコレートを渡されるのはやっぱりうれしいもの。トイレに向かっていた体を翻し、にこやかにBongoへと戻って、もう一度受付の方へ歩いていくと・・・パドックの向こう、遅れていた藍色のハイエースが受付に横付けされていた。

<つづく>