これがホントの走り初め 3

「あれー、RMは?降ろさないの?」CRF150RⅡだけがBongoの脇に傾げているのを眺めて、語尾を延ばしながら訝しげな声を上げる。「一応降ろすけど・・・コレで様子を見てからかなー」何せRMに乗るのは去年の暮れ以来、そして、ここひと月はコレ、CRFにも乗っていない・・・。いろいろと探りながらの朝一番に“エンジンの慣らし”を足すのは、余計に気を使う破目になる。組み上げたまま、一度もエンジンを掛けずに積んできているから、あとでエンジンには火を入れないと・・・そんなことを考えながら、再び荷室にもぐって、RMのハンドルバーに垂れているタイダウンを取り外す。ハンドルを支えて窓側に起こすと、勢い余って倒してしまうくらい、細身で華やかなマシンは、腕に軽かった。

黒を基調に青の濃淡が描かれているウェアに着替えて、Bongoから外に出る。気温の割には、かじかむような寒さはない。立春も過ぎて、陽は春を装いはじめているようだ。イバMOTOで手に入れたoneのウェアは、「RMの黄色に合いそうだ」と、結局ワタシが着ることになった。新品の黄色いグローブはTHOR製。こちらは“本気ライダー応援セット”で買った二双のうちのひとつ。こちらもRMに合わせたつもりだ。張り詰めた雰囲気の割には台数がまばらで、二クラス混走で9時を迎える。先にコースに向かったざりままの後を追いかけて、隣の師匠よりも一足先に、“ベストコンディション”を確かめに出ていった。

「調度良いお湿りで、ベストコンディションです」・・・わざわさ“ベスト”と言う時は、きまって路面は緩い。“ベスト”だけで“ドライ”の文字が綴られていない時は・・・少し用心しなければいけない。たぶん「走っているうちにタイヤがよく喰いつくようになる」・・・MX408コース情報でsaitoさんが言う“ベスト”が、そのくらいの意味だということは、コースに入ってホームストレートをひと開けすれば、すぐにわかる。だから「レースはマディでもありますからね。マディの練習もがんばりましょう」“マディ”という言葉を使うときは、かなり覚悟しなくてはいけない。「この分じゃあ・・・RMの出番はないかもなぁ・・・」スロットルを開けるに開けられない上り坂は、ただ、つまらないけど、とてもなつかしかった。

<つづく>