雨あがりなのに。

窓の外に青と光があふれる中で目覚めるはずだったのに・・・一気に開いたカーテンの先、広がる空は期待していた色と輝きを映してはいなかった。「朝起きて気分が良かったら・・・」師匠に返したメールのようには気持ちが高まりそうにない。薄灰色の雲に覆われて、路地裏のアスファルトの上に残った水たまりからは、細長くクルマのタイヤ痕が延びていた。隠れたままの太陽を探しながら歩くあぜ道にも、風にさらわれて、雨の名残がさわわと揺れている。両脇の田んぼは、たっぷりと雨水を含んだまま、MX408を思わせる焦げ茶色に染まっていた。

12時を過ぎても、雲はまだらに薄くなるだけで、晴れていく気配は無かった。気温もそれほど上がらないことは、西の空の端まで微かな濃淡だけで続く雲のうねりを見ていれば、わかる。XR230に充電したバッテリーを取り付けて、うろちょろする気にもなれず、家の中にずっと籠るのにも嫌気がさしていて・・・昨夜、Bongoに積み込んでいた荷物とRMをガレージに戻すと、代わりに先週タイヤに目一杯空気を充填したBMXを外に引っ張り出した。ちょっと使わないとすぐに怠ける“大腿四頭筋”を鍛え上げるのには、コイツがちょうどいい。

“立ち漕ぎ”のまま、アスファルトの小道からあぜ道に下りていくと・・・フロントタイヤが土にめり込み、リヤタイヤはペダルに込めた力を逃がして、勢いよく空転する・・・ラインを外して泥に捕まったRMのようだ。そのまま失速したBMXのシートに腰を着けて、左足を土に落とす。VANSのスニーカーの白い底が、泥に埋まって茶色くなった。右足に力を込めても前に進まないBMXをあきらめて、ぬかるんだあぜ道を押して出ていく・・・スニーカーを台無しにして、「やっていることは同じ」。何だか可笑しくなって、田んぼの真ん中、声を出して笑う背中に、ほんのりと薄日が差していた。