More Than A Feeling

新しく始まる月に、新しい文庫本を選ぶ。サイドボードの一角、わずかばかりの本棚には、買ってきたまま横になって積まれている文庫本が、ひたすら出番を待っている。その中の一冊をカバンに詰めて、革靴にかかとを入れるのももどかしそうに、あわただしく外へ出る。どの番組だったかは忘れてしまったけど、背後に流れた聞き覚えのある旋律が、どうしようもなく気になっていた。

耳に残った音色を、さっそくYou Tubeで探し出す。電車が到着する前に、それは簡単に見つけられた。「ちょっと聴きたい」を、手のひらに収まった端末がすぐに満足させてくれる。レコードを聴いていた時代には無かった、便利さだ。邦題『宇宙の彼方へ』。ずいぶん洒落ているけど、ぴたりとはまった曲名。ヘッドホンから、軽く歪みながらも伸びやかに、『宇宙の彼方へ』吸い込まれていきそうなギターの独奏が聞こえる。絞り出すようなボーカルの、この透明な感じも、どこから来るのだろう・・・マサチューセッツ工科大学出身トム・ショルツの緻密な編曲が、そう響かせているのだろうか・・・。

その彼方にひろがる宇宙で、ここ一週間ほどの間、太陽系の惑星を5つまとめて見られるとは素敵な話だ。木星、金星、火星に、水星と土星・・・ここまで揃うのは、8年ぶりらしい。オリンピックよりも貴重な夜。夜中にならないと姿を見せない土星はともかく、日が沈んでから一時間もすれば、4つの星が東と西の空で瞬いてくれる。このまま空に雲がかからないように・・・I closed my eyes and I slipped away・・・想いを馳せて、目を閉じる。