じゃあ、来週 4

場所取り用に置かれたオイル缶を斜めに避けて、そのまま頭からBongoを突っ込む。前タイヤが、小さな水たまりを押しのけて、ひとつ大きな水たまりを作った。助手席に手を伸ばしてゴム製長靴を取り、履いてきたスニーカーと取り替えてから、運転席のドアを開ける。下に降ろした右足が、音を立てて泥をはねる。関東選手権の前日らしく、泥水など気にかけることなく、簡易テントがあちこちに張られていた。探るようにつま先立ちのまま、スネークヒルに向かって歩いていく。坂の上には、小さな子どもの手を引いたお母さんたちが、びっしりと並んでいる。関東選も今ではkidsたちの真剣な戦いの場になって、さながらkids Supercrossの前日と見紛うばかりだ。思いっきり泥に埋まってよろめく体の正面に、2ストロークの甲高い排気音が響いてきた。

重たい土に何本ものラインが深く、無秩序に刻まれている。85CCの小さな車体は、そのワダチにほとんど隠れてしまうのに、お構いなしに右手をひねり続けては、YZ85やKX85といった2ストマシンが勢い立ち上がっていく。折り返して、スタンディングのまま下っては、またスロットルを大きく開けて、こびりつく路面からマシンを引きはがすように、小さな2連ジャンプを跳び上がっていく。こんな子どもたちに交じって走れば、ワダチも失速させないでさばけるようになるんだろう。あけすけな走りに元気をもらっても、大人は後先を考えてしまうからいけない。この路面状態で走ったら、マシンはボロボロ、洗車だってべらぼうに時間がかかる。やっぱり今日は見るだけにして、スネークヒルの縁からすべり落ちないように横歩きで降りていく。

<つづく>