跳べない天使たち 1

雨を待っていたかのように、メールが入ってきた。しかも、会社用と個人用の携帯それぞれに送るという、念の入れようだ。送信者の名前を見れば、メールを開かなくても内容はわかる。件名には『本日』とある。「本日は、どんな感じでしょうか?」で始まる、いつもより長めのメールは・・・夕方からの予定が細かく書かれた、「徹夜でカラオケ!」のお誘いだった。

週末、雨で練習が流れそうなときに・・・と約束していた、まさにドンピシャな金曜日の朝。雨は土曜日まで続くと言うから、今度はワタシがメールを送る番だ。送り先はiguchi師匠、件名に・・・『どうします?』とだけ記す。降り続ける雨を呪うように、ひと月も乗れないことに涙するように、気づけばずいぶん湿ったメールになってしまった。

しばらくして返ってきたメールも、“てるてる坊主”なんて文字まで出てくる、かなり湿っぽいものだった。師匠の作るてるてる坊主に、遠くから好天の祈りを込めて・・・さっそく歌トモにメールを返信だ。書き出しに「やはり明日は中止になりました」と短く記して、約束のお昼までに送信を終わらせる。それまで塞いでいた気持ちに、明るく楽しげな光が差してきた。

<つづく>