跳べない天使たち 2

すでに閉店までのオールナイトで予約済み。手回しの良さが、何とも心地よい。ヒトカラで鍛えるだけのことはある。仕事を終えて、クルマで千葉の印西まで向かう道のりは雨の中だ。約束の22時まで、あと5分。降りしきる雨をワイパーで掻いて、何度も切り返しながらBongoを停める。黒く濡れそぼった駐車場を照らす照明はまばらで、雨ににじんだウインドウからは、ミラーに映るアスファルトがよく見えない。建物の近くに一台分だけ空いていた白線の枠、その枠の真ん中には収められなかった。

「22時難しそうなので先に入ってモラエマスカ?」歌トモの言いつけどおり、先に受付を済ませる。応対してくれたのは、白いカッターシャツが似合う短髪のお兄さん。「LIVE DAMが残ってたのは、奇跡なんですよ」予約が上手く入っていなくて、ギリギリで部屋を取り直したから・・・人気の“LIVE DAM”が予約できたのは奇跡的だということらしい。「奇跡」を繰り返して力説する彼に案内された部屋はNo.3。ちょうどアイスクリームケースの向かい側、裏手にドリンクバーがあって、フリードリンクで唄う人間には、すこぶる都合のいい場所だった。

<つづく>