Separate Ways 8(完)

westwoodにも寄った帰り道、利根川を渡る国道6号線は、ひどく渋滞していた。右手に広がる空っぽの田園風景の上で、薄い雲を後ろからぼんやりと太陽が照らしている。何となく丸い形が想像できるだけの輪郭を残して、いつもの三倍ぐらいにふくらんでる。5時30分になっても、水田の中を真っ直ぐに伸びた農道を走るクルマに車幅灯は要らないくらい、陽は空のまだ高いところにあって明るかった。バックミラーには黄色だけが映っている。2本のタイダウンベルトでしっかりと固定されたRMは、来た時と違って、道路の粗さにもまったく動じていなかった。

西の空の下にまだ橙色が残る時間にたどりついて、泥が付いたままのRMをガレージへとしまい込む。次から次へといなくなって、あっという間に殺風景になったガレージ。上半身をねじるようにして通り抜けていた狭いマシンの隙間は、もうなくなってしまった。

工具箱やガソリンタンク、ビニール椅子をひととおり片付け終わって、汚れたウェアとガードを一緒につっ込んだ洗濯機を回す。着なかったoneのウェアを抱えて二階へと上がり、寝室の雨戸を閉めようとカーテンを開けると・・・さっきの西の空に金星と木星が縦に並んで瞬いていた。開け放ったガラス戸から二つの綺羅星を眺めていたら、視界の左隅を流れ星がひとつ、斜めに長く落ちていった。「流れ星?」と目で追っていたら、三回願い事を言う間もなく消えて見えなくなったけど、明日が晴天になりそうなことだけはわかった。じきにナノハナの季節がやってきても・・・これから一年の間、Bongoのバックミラーにナノハナが咲くことはない。ryoと二人、しばしseparate ways・・・。