三分咲き 前編

まだ冷たい風の上に、強い光が降って落ちる。アスファルトは白く照らされっぱなし、畑の土も、薄茶色を通り過ぎて、乾き、ごわごわしている。冷気に合わせれば汗をかき、陽射しに都合をつければ鳥肌が立つ。春は案外したたかで、油断をしていると、あっさり風邪を引く。天と地と、こんなちぐはぐな感じが、いかにも春っぽい。それでもブ厚い服を置き去りにして、薄い生地に手が伸びるのは、春の明るさに惑わされているから?でも、浮かれた気分になるのは、そう悪い話じゃない。

家の東側は、隣家を取り壊したまま更地になっていて、Bongoとcarryが毎日駐まっている。真四角をした土地の一番陽が当たる一辺に菜種を撒いたのは、去年の春が終わった頃。それが、芽吹いて、大きく伸びて、混じりけのない黄色を点け始めた。桜ならば“三分咲き”といったところ。日ごと玉のように黄色が育っていくのは、何とも頼もしい。ただ、あまりにも立派な太い緑が真ん中になっているから、どこか大味で、興ざめしてしまう。ナノハナは、細い茎をにぎやかに彩るのが春らしくて、いいはずなのに。

<つづく>