まぶしくて、ぜいたくな午後 3

uchinoさんのcarryとは対角線上の位置に、Bongoを置いてみる。奥は意外と空いていて、両脇には、開けっぴろげなパドックが広がっていた。エースのコーラスがフェードアウトするのを待ってエンジンを切り、運転席から体を落とす。昨日とはまるで反対の方から泳いでくる風は、頬に少し冷たかった。

助手席のドアに屋号が記されたcarryに近づいてみても、人の気配はしない。そのまま振り返って、今度はコースに向かい、斜めに歩き出す。ところどころで足の裏が張り付いたように引っ張られて、そのたびに靴底の形をした雨が浮き上がる。この雨は、これから走るコースの上にも落ちているはずだった。

スネークヒルの下り、頂上から一番近いアウト側の縁に、見覚えのあるDUNLOPの黒いジャンバーが固まっている。ちょうど本コースとミニコースの出入り口があるところだ。東側を向いて乾いた斜面をゆっくりと上りきって、その黒い背中の上から声をかける。「おはようございます」マスクに隠れた口元の動きが見えるかのように、鋭いまなざしが細く柔らかな弧を描いた。

<つづく>