こちらも全開・・・じゃない、満開。

夕べ、ちょこっと水たまりを作るくらいの雨雲が通り過ぎて・・・その水たまりを、少し強めの風と明るい陽射しが撫でつけている。4月からの新しいお天気お姉さんは、画面の中、風に乱れる前髪を手で押さえながら「日中はぽかぽか陽気になりますよ」と笑っている。紫と桜色の中間のような淡い色をした春物のコートから、ほどよく整った脚が延びている。若い彼女の言葉どおり、日中の陽気を十分に予感させる太陽が、東の空に高く上っていた。

シロとネロと一緒に潤いの残ったあぜ道をたどり、朝の空気を吸い込んでは息を吐く。ネクタイを締めたワイシャツの上は、薄いナイロン生地のヤッケを羽織っているだけなのに・・・陽射しに押された肩甲骨の辺りには、もう熱がこもってきた。田んぼの終わりから戸建てが並ぶ団地に入ると、建物のすき間を見つけて、陽射しが陰を抜けていく。「紫外線が強い」と言われればうなずくだけの光が、濡れたアスファルトから跳ね返って、まぶしく映る。

この雨で、都心の桜は、薄紅色に落ちてしまっただろうけど・・・こちらは今が盛りと咲き誇るばかり。強烈な黄色が、太陽に負けないように、まぶしく揺れている。雑草だから、しぶとくて、花の保ちもいい。風が吹いて雨が打っても、揺らめくだけ。色を無くさない。そして、いつも光に向かって、上を見上げて伸びている。むせかえるような、その花の香に顔を近づけていたら・・・風に傾げた花びらが戻りしな、さっと頬を触っていった。唇には、その蒼い感触だけが残されていた。