#357~その4

と思いを巡らせている間に、「あれ、知らないの?」saitoさんが思わせぶりなことを言う。「えっ!?」と返すのとほとんど同時に、はだけた黒いジャンパーの下から指二本分くらいの幅の白いテープが覗く。そのテープに押しつけられているのは、くの字に曲げられた細い右腕。オフロードヴィレッジでヤッたらしい・・・。ジャンプの進入でマシンが振られて、そのまま斜めに“離陸”。体も車体もまっすぐに向き直ることなく着地して・・・フッ飛ばされたと、まあ、想像は付く。ありえない動きが収まるまで、まるでどうにもならない時はあるものだ。あとは運まかせ・・・それにしても“受け身上手”のざりまま、いつもは“前転”してもかすり傷なのに、余程打ち所が悪かったのか、はたまた・・・。「浮気するからだよー」MX408じゃなくてオフヴィレを選んだざりままに、saitoさんと二人、容赦はしない。受付に響く三人の笑い声は・・・空にも届いただろうか。コースチラシと“3枚セット”を受け取り、Bongoのクラッチペダルから、ゆっくりと左足を放す。

<つづく>