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ガード下に思いがけず小ぎれいな店が並んで、その脇を歩道が明るく広がっていた。新橋寄りの改札から出てきたおかげで、ずいぶん遠回りさせられてから地下鉄の入口を見つけて、エスカレーターに飲み込まれていく。乗り換えたJRの駅名をそのまま路線に名付けた感覚は見事だ。地下の通路に入ってからも少し歩かされて、ホームはさらに一段下がったところにあった。

“浅草”線よりもちょっとだけハイカラなカンジが、江戸っ子たちの足下をくぐるように走る。コンクリートの管の中、汐の香が届きそうな駅名が続いては、過ぎていく。降り立ったのは、四つ目の駅。安全柵の工事でもしているのか、開いた扉の先は極端に狭くて、柵を作る前にこぼれ落ちそうな幅が細く続いていた。その後も工事中を隠す白い板が張り巡らされていて、その上で、赤い手書きの矢印が、小刻みに右へ左へと案内を出している。手作りの迷路にでも誘い込まれた気分だ。

改札につながるエスカレーターを上がり、教えられた「出口4」の黄色い看板を頼りに歩き出す。通路が突き当たる手前、斜め右方向に、「出口4」の階段があった。地上に向かって、まっすぐに、一歩一歩近づいていく・・・5・4・3・2・1。目の前に現れた豊洲の街は、やわらかな橙色の陽に包まれていた。