ご機嫌な別れ 5

今日の“ワンコイン”定食は麻婆豆腐。お気に入りのレバニラじゃないのが残念だ。あまり辛いのが来なければいいなと思いながら、天井から聞こえるニュース番組に首を思い切り傾げる。高速道路の側壁には、崩れた大型バス。その理由を推し量ろうとする芸人キャスターが、何を解説するために呼ばれたのかわからない芸能人と状況証拠を並べていく。じっと見ている首が疲れてくる前に、皿から湯気の立つ麻婆豆腐定食が運ばれてきた。寸胴の器には山盛りのご飯。「ご飯はお替わりできますからね」と笑う小姐に、あいまいな微笑みを返して、付け合わせのサラダに箸をつける。乱雑だった盛り付けが、日増しにまともになっていくのが楽しかった。

#129に寄り添うように、#274が第1コーナーへと消えていく。続く第2コーナー・・・予想もしなかったアウトバンクへ、赤いリヤフェンダーがまっすぐに伸びる。テーブルを跳び上がって、第3コーナー。そして、ステップアップを越えて、第4コーナー。あれほど「アウト回っていたら遠くて、ダメ」と言っていたのに・・・ことごとくRMの先を回るCRF150RⅡ。ただ、アウトを走っている間は、RMが離れることはない。替えたばかりのクラッチ板をいたわりながら、ていねいにコーナーを立ち上がるiguchi師匠・・・マシンは、ジャンプの斜面にかかるたび、ガボボボボッと息をつかせている。この前、すぐに全力走行を始めた師匠が、ずいぶん大人しい走り出しだった。

<つづく>