まみむめも

「五月晴れ」と言うには、ちょっと光が弱い気もしたけど・・・風にさわぐ水面に、しっかりと小振りな太陽が浮かんでいた。このか弱さが、半年もしないうちに黄金色の大波になる・・・まだ緑もはっきりしない、細くて短い稲が、右に左にせわしなくそよいでいる。昨日の嵐が去って、湿り気がひんやりと残る朝。また5時45分の目覚ましが活躍する一週間が戻ってきた。

陽射しを浴びて、川面のように揺らめく窓ガラス。東南を向き、一面にガラスを敷き詰めた高層ビルが、生き物の息づかいが聞こえてきそうなくらい、ゆっくりと有機的にうごめいている。街のすべてが、空に上がった太陽を歓迎している。その光の中を、四日ぶりになる事務所へと歩いていく。北西に面したビルの入口には、冷えた風だけが届いていて、ネクタイを外したワイシャツの襟元を冷たく触っていった。

閑散としていた空間に、人が戻っている。あちこちのおみやげが手から手へと配られ、思い出を引き出してやらないと気の毒そうな感じだ。さっそく「第二東名高速を走ってきた」と言うハーレー乗りの話よりも、パソコンに届いた歌トモからのメールに口元がゆるむ。最新機種“CROSSO”でカラオケを愉しんで、スマホに入れた自分の歌声を確認する・・・あまりの下手さ加減に「どうすれば上手くなるか」インターネットで検索、自分なりに見つけた答えが「まみむめも」。

「まみむめもが歌い出しの時は、控えめな音量で歌った方が聴きやすい」らしい。陽射しが入らない10階の角部屋で、ワタシの周りにだけ、さわやかな風が舞う。もう少し落ち着いたら・・・“レインボー”で練習の成果を聴かせてもらおうかな。