ご機嫌な別れ 9

東武動物公園駅の改札を抜け、駅舎の隣に建つビルの2階。魚民の横にある非常階段から、下に降りる。業務用で何の工夫もない鉄の階段を、一歩一歩、不器用に降りる。左足が着くたびに、太ももの付け根に痛みが響く・・・朝イチで届いたsada-chanのメールにも「なぜか股関節、筋肉痛になってんですけど」と書かれていた。股関節痛は、運動不足なのか、それとも走り過ぎか。それでも脚がきしむたびに頬がゆるんでしまう。その笑顔を周りに気づかれないように、駐車場に続く暗がりの中へと走っていった。

「うまく撮れた」という空中の一枚は、背中が曲がり過ぎ。せめてステップダウンのテーブルを跳び上がった時ぐらい、もう少しシャンとして、伸び上がらないと・・・片足を離して、カメラマンに応えている場合じゃない。遠くバックストレートを望む景色には、もう出会えないかもしれないのに・・・。そんな感傷にひたる間もなく、青ゼッケンのフルサイズマシンを駆る顔見知りに、ひとしきり遊ばれて、体がギシギシと音を立てる。最後に“ガス欠”から戻った師匠と、もう一勝負。saitoさんのチェッカーを、その赤いマシンの直前で受け、ゆっくりとコブを折り返して、パドックに引き上げる。

<つづく>