願わくは 8

ひとつ目のクールを走り終えてパドックに戻ると、Bongoの向こうに、#51のCRF150RⅡが斜めに停まっていた。遅れていたokano師匠だ。「最近は土曜日が休めなくてな」・・・ほとほと草臥れるぐらいに、忙しいらしい。まだ着替えもしないで、やわらかく笑いながら、パドックをゆっくり歩いていく。見えなかったはずの太陽が、ひとっ走りして熱る上半身に陽射しを浴びせる。どうしようかと悩んだ末に立てておいた日除けのテントが、早くも役に立った。長方形に出来上がった影の中、イスに腰掛けて、体温が下がっていくのを待っている。四人で話していれば、40分なんてすぐに過ぎる。10時20分、揃ってエンジンに火が入った。

ryoも居ないし、周りは3台とも4ストマシン。けたたましく金切り声を上げるのは、子どもたちの65マシン・・・これが、何の迷いも無くジャンプを跳んでいくから、あきれるやら羨ましいやら・・・。そんなちびっこ達に交じって、あきらかに歩みの遅い大人たちが点々と散らばっている。その中にあって、今日はiguchi師匠の威勢がいい。ひさしぶりのMX408は生まれ変わっているし、全日本モトクロスの広島大会での“熱さ”が脳裏に焼き付いているし・・・走行時間になる前からヘルメットをかぶり、軽くエンジンを煽って、さっさとコースにフロントを向けて走り出すだけのことはある。スタートラインに並んだRMの前を、1回目とは明らかに違う速さで、#129のCRFが第1コーナーへと見えなくなっていった。

<つづく>