願わくは 10

okano師匠と、第2コーナーの真ん中から手を振るsatakeさんに目配せをして、もう一人の師匠に視線を戻す。後ろを走るのは「この夏までに追いつけ、追い越せ!」と妙に対抗心むき出しのmachi-san。このところ速くなってきているし、「仕事が忙しい」なんて言っている場合じゃないな。近づいてくる、ひときわやかましい排気音に背中を押されて、前を走るCRF150RⅡを追いかける。とことんイン側をたどる、丸くて大きな背中。「あのくらい、跳んじゃうよ」ジャンプが苦手なワタシを尻目に、勢い斜面から跳び上げるiguchi師匠・・・パドックで聞いた啖呵に嘘はなかった。先に攻略した面目は丸つぶれ。すがるように背中を見つめ、握力が消えかけた右腕でスロットルを握り直す。後は照りつける太陽を味方に引き込むしか無さそうだ。このところ頑強な走りのCRFが先か、RMか・・・走行時間の後半10分は、“我慢比べ”になるのがまた楽しい。

願わくは、干からびて固くなった土を掘り返して、すべてのコーナーをフープス後の左回りように・・・。願わくは、コーナーのイン側をもっと張り出して、アウトバンクとの差を小さく。そして、願わくは、アウトバンクを盛り上げて、走り始めたあの頃のように、そそり立つ高い壁になるように・・・。短くなったホームストレートで“攻守交代”して、そのCRFに責め立てられながらも、インを譲らずに走るRM。ロングテープルトップのすぐ脇で、右手を大きく振り上げて、ニセmanabuが二人を煽る。“ドッグファイト”ぶりは、その姿を見なくても、音を聞けばわかる。焦り始めては、リヤタイヤが路面の上っ面しか掴めなくなって、何度も横すべり・・・スネークひとつ目のテーブルトップから、危うく落っこちそうになる。その後も、あちらこちらで暴れまくるRM。そんな姿を目の当たりにして“退いた”のか、先に速度を落としたのは赤いマシンの方だった。

<つづく>