イバMOTO 3

浄水場を右手に、高台へとアスファルトが走る。坂の途中、バス停の信号機に路地が左からT字にぶつかる。okano師匠の家は、その路地を入ったところにある。イバMOTOに出走を約束したのが半月前。この天気で「どうするんだろう・・・」と考えながら、Bongoのアクセルペダルの踏み込みを深くする。前を走る白いセダンに追いついた時だ。派手なメッキの大径ホイールに扁平タイヤを履いた軽トラックが、左の路地から「止まれ」を越えて頭を出してきた。荷台に赤いバイク・・・51のゼッケンをつけたCRF150RⅡは間違いない、okano師匠の愛機だ!ウインカーがMX408とは反対方向の右に出されているけど、行先はもちろん同じはず。運転席の中、紺色をしたFILAの半袖から、やる気のある“二の腕”が覗いている。クラクションひとつ鳴らせないまま、その笑顔の前を通り過ぎる。Bongoのハンドルをギュッと握りしめて、セダンの低い屋根の向こうに視線を戻す。さっきと同じ空が、少しだけ、明るくなった気がした。

<つづく>