イバMOTO 7

半年ぶりに見る、灰色のスターティングバー。グリッド抽選のないイバMOTO、相手はみんな顔見知り・・・それでもレースはレース、真剣勝負に変わりは無い。いつもスタート寸前に飛び込むグリッドに、okano師匠を引き連れて少し早目に来たのに・・・二人が最後だった。もう勝負は始まっている。グリッドの右半分、第1コーナーに向かってアウト側15台分のバーが、45°の角度に立ち上がり、にぎやか色彩のマシンに「待った」をかけている。アウト側のさらに一番外でマシンに跨るのは、nakaneさんだ。この中で互角に張り合えるのは一人も居ない、MC-SEクラスの#2。そう言えば去年の最終戦も、#1をつけたCRF150RⅡが一番外側のグリッドに収まっていた・・・じっと前を見据える横顔が、半年前、そこに居た“クレイジーkenya”を思わせる。その一台を除けば、みんな真ん中に集まって、一番内側に停まるのはmatsunagaさん・・・そのYZ85LWとmukaさんのCRF150RⅡの間に、RM85Lが割って入る。今年から始まった“MC”saitoさんの選手紹介に左手を伸ばして応えてから、RMを下げて、もう一度リヤタイヤをグリッドの窪みに合わせる。すぐにスターターのiguchi師匠の右手が大きく振り回されて・・・8台のマシンは、ほとんど同時に排気音を上げ始める。忙しない右手の動きに、RMのエンジンが割れた音を吐く。5秒前のボードを下ろして、iguchi師匠がホームストレートから離れて、1、2、3・・・口の中が渇いて、喉が張り付いて、それでも前にかがめた体を起こさないようにして、じっと灰色のバーだけを見つめる。

<つづく>