イバMOTO 10

バックストレートを駆け上がり、止まっていた思考が回り始める。少なくても、「アウトを遠回りしていたんじゃ追いつかない・・・」と考えるだけの余裕は出てきたようだ。saitoさんが、バンクに土を盛って少しばかり高く積み上げてくれた、バックストレートから左に折り返す幅広のペアピン。午前中に試して、バンクの頂点からインに切り込んでいけば、案外、前との差を詰められるのはわかっていた。「どうする?」一瞬迷ったけど、そこはやっぱり直線番長・・・バックストレートが終わるところまで走っていって、気持ちよく切り返す方を選ぶ。乾いた砂の上、スタンディングで左にブレーキターンを始めると・・・思ったよりも大きく車体がすべり、瞬間、上半身が硬くなる。それでも、立ち上がった先に#51のテールカウルが覗けば、“気持ち”がマシンを立て直す。RMが垂直に落ち着くのを待って、左指でクラッチレバーを軽く引くと・・・空転したリヤタイヤが斜面で路面をつかみ、続くテーブルトップを中途半端に離陸。不用意に浮き上がった黄色の車体が、二連ジャンプの狭間に音を立てて落ちる。ただ、体に衝撃は伝わらない。どこかが麻痺していた。

<つづく>