イバMOTO 12

飛距離も伸びてきたダブルジャンプを越えると、旗振りをしているryoが、何か言いたそうな顔をこちらに向けている。どうせ「先頭は、ずっと先だよ」と笑いたいんだろう。歯がゆい気持ちもわかるけど、ワタシの走りは、この辺でいっぱいだ・・・まだまだ練習が足りない。その脇を回り込むようにS字をなぞり、スネークのひとつ目を軽く跳び出す。下りきった斜面の向こう、スネークヒルの上り口には、黄旗を抱えたざりままが立っている。ちょっとばかり良いところを見せたいのに、一番苦手にしているコーナーで手を振られては・・・かえって足をすくわれてしまいそうだ。薄いカーキ色のパンツが路面と同化して、午前中はどこに居るのかよくわからなかったのに、ココなら大丈夫。笑った表情まで、はっきり見てとれる。何てたって、ほとんど止まってから右に上っていくんだから・・・。視線に誘われ、アウト側に寄せられた土に何度か乗り上げそうになっても、素知らぬふりして軽くクラッチレバーに指を当てる。長い半クラッチの後ろから、太い排気音が覆い被さってきた。ここら辺りは・・・師匠の方が、一枚上手な走りをする。

<つづく>