Stratocaster

冷たい日が続いていて、夏の入口に立っていたことさえ忘れてしまっていた。でも、昨夜の雨は起きた時には止んでいて、風のない今日の曇り空は、少し蒸し暑く感じられた。それから少しずつ明るくなっていって・・・昼過ぎに姿を見せた太陽が、夕方の5時になってから盛りのような陽射しを振りまき始めている。夏至が近く、一年で最も昼が長い今は、一日で二回分、昼間を味わっているようなぜいたくな気分にさせてくれる。夕焼けになるには白々とした光が、空にあふれていて・・・窓越しの明るさに向いた鼻をつまむ左指から、わずかに鉄の匂いが漂う。匂いは変哲もないものだけど、指の腹からするのがなつかしい。「雨の季節でも寂しくならないように・・・」と先週の木曜日に、バイクとは違う相棒が届けられた。黒い有機的な曲線から、指板のついた“ネック”と呼ばれる木片がまっすぐに伸びている。「Stratocaster」。本当はLes Paulが欲しかったんだけど、値段に負けてこちらを選んだ。まともに弾くのは30年振りだし、途中で投げ出しても大丈夫な額におさめた結果だ。それは、モトクロスジャージの定価でおつりがくるほど安い。だた、届けられたギターは、とてもそんな風には見えない、しっかりとしたつくり。本家Fenderのモデルと比べても、ワタシには“遜色”が見当たらない。ひと足先に手元に届いていた『THE BEST OF KISS 26 CLASSICS FOR GUITAR INCLUDING』を開いては、おぼつかない左指に合わせて、右手に持ったピックが上下する。リフのひとつもまとも弾けないなんて・・・まったくモトクロスを始めた自分を、もう一度見ているようだ。短くて太い指をストリングにからませながら・・・これでしばらくは、“晴走雨奏”な週末がやってくる。