髪の長い女だって?

『BG』というバイク雑誌がある。buyers guideの名のとおり、中古のバイク雑誌だ。イラストで描かれた“年代物”のバイクが、毎号表紙を飾っている。インターネットがこれだけ日常になって、昔の“検索もの”には、ずいぶん肩身の狭い世の中になった。未だ現役を続ける『BG』には、がんばれ!の思いが募る。表紙のバイクが年代物なら、中身の特集に登場するのも、かなり古めのマシンだ。中古車を扱う本だから、当たり前と言えば当たり前だけど・・・古めのマシンというのが、バイクブームの申し子には、たまらない。編集部で責任のある立場の人間が、ちょうど同じ世代になっているのだろうか・・・琴線を刺激する絵や活字は、どうにもそそられてしまう。朝、いつもの準急が来るまでのわずかな時間に、思わず手に取ってしまった『BG』。綴じ込みの付録が、縮小復刻版のSUZUKI RG250γだったから・・・。

45ps、AL-BOX、2.91kg/ps。並んだ胸を熱くする英数字とは別の想い出が、青と白で塗り分けられた2スト250ccには刻まれている。腰まで届いた長い髪を、あの頃にはめずらしく茶色に染めていた彼女。shoeiのフルフェイス、スモークシールドに隠れた視線と、環七を途中まで並んで走って帰った日々。「女だてらに初期型γなんて・・・」と社会人成り立てでやっかんだものの、哀しい理由があったことに恥ずかしさを覚えた日。ペアを組んでミニバイクの耐久レースに出て、会社のみんなと記念写真に収まった日。彼女は、まだ髪を伸ばしているんだろうか・・・まぶたの後ろで笑うyabeちゃん、その髪を思い出していたら・・・準急に乗り遅れそうになった。駆け込んだ車両の隅、長い髪を揺らす後ろ姿に、yabeちゃんの笑顔が透ける・・・今も元気に笑っているだろうか?どこかでふっと逢えたらいいのに。