暗くなる前に

雲が薄れて、灰色から白へ。そして、夕空には青が戻ってきた。北西を向いたモルタルの塀に、やわらかな陽光が映って、うっすらと黄色に染めている。梅雨の晴れ間らしい、ムワッと不快な湿り気は乾いて、レース地のカーテンを揺らしながら部屋に入り込む風は、ひんやりして肌に心地良い。そろそろ外に連れて行ってもらえるのがわかるのか、ゲージの中でシロとネロが、くるくると回っては忙しなく動いている。プラスチック製の底板に、固い爪がカチャカチャと音を立てる。画面に沖縄が梅雨明けしたニュースが流れて、原色のノースリーブに日傘の女性が、テレビカメラに微笑んでいる。なんだかうらやましくて、ちょっとばかりくやしくて・・・こちらはもう少し、我慢しなくてはいけないようだ。週間天気予報には、雲のマークがほとんど。「明日の晴れ間を大切に」と、女性キャスターが抑揚のない調子で原稿を読み上げていた。番組はいつしか歌番組に変わり、さだまさしエレカシの競演が映し出されている。二人とも、さりげなくコードを押さえて、左手を見ることなくマイクに向かっていた。ワタシの左手は・・・思った場所に居なかったりする。今日もまともにリフが弾けなかった・・・さあて、暗くなる前に散歩に行くか!