梅雨の晴れ間に 1

「富士の方も雨が降りだしたよ・・・」富士山を望む宿、その窓から雨の滴る外庭に向かって声をかける。知り合ったばかりの連中が、脱いだレインウェアをバイクにかけて・・・どうやら出先で予報どおりの雨に出くわしたらしい。そこからなぜか「これじゃあ走れないや」と独り言。夢とうつつの別がつかない、はっきりしない頭で、携帯に設定してあったアラームを解除する。走れないんじゃあ仕方がない・・・雨音が聞こえない部屋、遮光カーテンに包まれた暗がりの中で、惰眠をむさぼる。でも、降り出した雨は・・・夢の中だった。日曜日の朝は、一面の雲に薄日がのぞく、昨夜見た天気予報のとおりの空模様。夢では予報も違っていたようだ。我ながら“芸”が細かい。ようやく目が覚めると、7時30分を越えて、もうすぐ8時になろうとしていた。起きるつもりだった6時30分からは、1時間以上も寝ていたことになる。ベッドから持ち上げた体がミシミシと音を立てて・・・少し寝過ぎたのか、背骨と腰の関節が鈍く痛む。ただ、ここは山梨でも静岡でも無く、埼玉の杉戸。明け方に見た夢のおかげで、すっかり遅くなった朝。まだRMも積んでいないし、ヘルメットもウェアもこれからだ。そうしている間にも、空から注ぐ光は、だんだんと強くなっていた。

<つづく>