梅雨の晴れ間に 5

聞いてみると、日陰にひとつ、大きな水たまりが残されていると言う。でも、それは、林の奥で黒光りする例の“逆バンク”じゃなくて、何でもない短い直線の入り口にあるらしい。それだけなら十分走れそうだけど・・・あまり歓迎していないのか、瞳と口元には、いつもと違う不自然な笑みが乗っている。とりあえずBongoを竹やぶの脇、沈まない“安全”な場所に避難させて、運転席から湿った土に足を下ろす。十代後半、張りのある大柄な肩と並んで、ゆっくりRM-Zのそばまで歩いていく。新しくなった半谷モトクロスパークは、速度の乗りが抜群、気分がいいと笑う・・・だけど、楽しく走るには、まだ首をひねる状態なのだろう。ワタシを見る目が、さびしそうだ。「まあ、せっかく来たんだから・・・」並んで歩いた距離で、もうRM85Lを降ろす気は無くなっていた。それでも「逆回りのハイスピードコースだけは見て帰ろう」と、そこから独りで歩き続ける。コースに向かうまっすぐな褐色・・・踏みつける赤土には、下から水が浮いてくることもなく、乾いた足跡が刻まれていった。

<つづき>