夏は夜 3/3

<7/1の続き>

右の目じりにだけ、そばかすが散っている。少し舌足らずの彼女に、4種類のカジュアルシューズを試し履きさせてもらう。襟ぐりの開いたワンピースを着ていて、ワタシの足下にかがみこむと、襟がふんわり浮き上がり、鎖骨とのすき間が広がって・・・その奥に隠れているはずの素肌が覗いている。天井からの照明が、かえって悩ましい。そのまま見ていたい気持ちに背を向けると、焦点の定まらないあいまいな視線が、彼女との間でフラフラする。

熱っぽい視線はワタシに向いているように見えて、実は手にした靴の数々に注がれているだけ・・・勘違いしちゃいけない。靴の特長、そして違いを細かく話す彼女、とにかく靴が大好きらしい。それぞれの靴の印象に、Clarksの“Desert Boot”と迷っていることを加えると、「Asbeeのアウトレットに、少しだけ置いてあるんですよ」商売っ気のない横顔が、右目をつぶって微笑んだ。そのまま彼女に「ありがとう」だけを言って、Regal Shopを後にする。いろいろと得した気分だけど・・・通路に出てからも見送る笑顔には、ちょっと気が引けてしまった。

アウトレットモールへ行くには、一度外に出なければいけない。1階に降りてきて、自動ドア二枚で隔てられた暗がりへとまっすぐに出ていく。オープンテラスのある飲食店が、作られたせせらぎに沿ってぼんやり並んでいる。店からこぼれる灯りと、歩道を照らすだけの、淡く小さな光。歓楽街のような、どぎつい色彩はひとつもない。原色に見える電飾も、宵闇にうまく溶けている。Tシャツの袖口から延びた腕を、漆黒の風がゆるりと撫でていく。今も昔も、夏は夜。軽めの装いで、隣に居るのがryoじゃなければ・・・もっと華やぐのに。

“AEON Lake Town”と光るチューブのはるか上に、月がぼわっと白く浮かんでいた。