夏仕様

雲の上には夏がいて、いつでも準備万端だった。灰色がちぎれていって、昼から先は、空が真っ青になった。ぎらりと輝く太陽は、形のない光のかたまり。高く小さく浮かんで、頭の上から強烈な光を落としてくる。細い路地、建物の間がクルマ一台分ほどしかないアスファルトにも、等しく陽射しが降ってきて、軒下のわずかな陰をのぞけば、すべてが夏のまぶしさだ。交差点で歩みを止めるたびに、全身に汗が浮き上がる。化繊のワイシャツもスラックスも、薄いだけで、少しも涼しくない。適当に汗を吸って、風に放っていく綿混じりの素材が恋しい。腰から太股にかけてぺたりと張り付いた4つのポケットが、踏み出す脚に引っ付いてきて、どうにも気持ちが悪い。短パンとTシャツに着替えて渓流沿い、平たい大きな石の上で寝ころびたい気分だ。大きなヒサシの陰を選んでは、路地を右に左に忙しく弾ける。歩いている距離は、もう倍近く。かえって運動量が多くなってしまった。それに合わせて、カラダも熱くなっていって・・・夏仕様のカラダは、こうしてできていくのかもしれない。明日からまた梅雨空が戻ってくるらしい。もっともっと熱くして・・・週末のカラダを準備しておかないと。