I remember that we had met

陽射しと風のいい関係が崩れかかる午後。トランポのバックドアが作り出す、わずかな日陰にカラダを収めての昼休み。冷えた麺をすする音が、あちらこちらから聞こえてくる。大したものを食べないから、昼飯にかかる時間は、案外短い。そして、食後は・・・炎天下に肌をさらして昼寝の時間がやってくる。風が吹いていなければ、そのまま焦げてしまいそうだ。首すじから胸元に汗を垂らしながら寝入るのにも、何だか慣れてしまった。

もうろうとした意識の中で迎える、午後1時。ただ、師匠は、いつもと様子が違った。イスからしばらくは動かないはずが、カラダを暑さに馴染ませるのに、正時の時報を聞く時には、もうヘルメットを着けるだけの格好になっていた。あわててブレストガードを頭の上から通して、後を追いかける。ほどよい具合だった路面は、ミニモトでさえ土煙を上げるほど・・・どこに水をまいたのかもわからないくらいに乾ききっていた。茶色の風が低く漂う直線の先で、CRFがダブルジャンプを跳び上がる。ようやく治った肩甲骨をかばいながら、朝から健気に励むのは・・・さりままだ。

低い放物線の頂点から、続く盛り上がっただけのテーブルトップに車体が落ちる。瞬間、青いanswerのウェアが上下に“グン”と縮まった。あとはリヤタイヤが斜面を越えるだけなのに・・・その数十センチが、なかなかうまくいかない。癒えたばかりの肩には、固い路面の感触が、そのまま伝わっているはずだ。スネークに消える、そんな“淑女”に負けちゃいられない。ゴーグルの下、少し汗ばんだ鼻先を指で拭ってから、クラッチレバーをグリップまで握りしめ、左足でシフトペダルを踏みつける。ガツンという鈍い衝撃が車体を揺らし、一速に入ったことを教えてくれた。

初めてMX408を走った日から一緒に居るのは、ざりままぐらい。あの頃から・・・ワタシは黄色いRMのまんまだ。気分を変えて、そろそろ“違う色”にしてみようかな?思いがめぐるように、瞳の中、赤い4ストマシンが上り斜面をうごめいていた。

<つづく>