あれから7日目の日曜日。 4(完)

午後になると、第一と第二コーナーが封印されて、スタート周と同じ配置に変更される。右にゆるく曲がる“うたかた”の第一コーナーが、直線を長くする。速度のノリも良くなって・・・二周目もこのままなら、もっとうれしいのに・・・。流れが変わったコースにあって、ひとつも変わらないのは、“色付きゼッケン”のマシンたち。散水で湿っているはずなのに、土埃を上げる勢いで駆けていく。さすがにまとめて交わされれば、気分は良くないけど・・・猫背で曲がっていくmukaさんの背中は、少しずつ小さくなる。

スネークヒルを上りかけると、色付きたちが下っていく・・・練習でこの差は、気力が失せていくギリギリの距離だ。そしてコースの上、また一人になった。ori-chanも二人の師匠もどこに居るのか・・・。見えない背中を無理矢理見えるようにして周回していると・・・CRF150RⅡの太い排気音が、後ろにぴったり張り着いた。さっきとは異質の気配・・・一台は間違いなくnakaneさん。相手をしているのは、katoさんだろうか。二人を相手に、ちょっと“抵抗”して走り続ける。

フープスから右に大きく、外へ外へと膨らんでいく。アウトの一番縁まで行って、わずかなバンクにリヤタイヤがぶつかる一瞬に半クラッチを当てて、そのままアウトいっぱいを立ち上がって・・・いたはずなのに、右手のすぐ後ろから、激しく音が聞こえる。「えっ、どこ走ってんの?!」と思う間もなく、空よりも濃いanswerのウェアが、右ひじをかすめていった。nakaneさんだ。ふらつくRMの、今度は左横にkatoさんのCRF。二台のバトル、遊びはココまでで、これから本気のようだ。

遊びでも、同じ音と風の刹那を感じて、ほんの少し二人の前を走れたのは満足だった。okano師匠が早くも着替えてしまった、3時からのクール。「まだ走るの?」と、うるおいの無くなったコースに送り出されて締めの一本。相手はもちろん、iguchi師匠だ。イバMOTOのひと月後、9月最後の日曜日、一年半ぶりに真剣勝負する。MC前週の雰囲気がそうさせるのか、お互いを探るように、じっと後ろに着いていたり、極端なラインを走ってみたり・・・めずらしく“駆け引き”の時間が続いていく。

クラス分けの無くなった最後の30分を、どちらもマシンを停めず、チェッカーまで走りきってしまった。陽は西に傾いて、マシンの濃い影が、長く伸びている。2つのテントも、竹林の影に飲まれていて、黒い影はパドックの真ん中へ少しずつ広がっていた。くたびれきって、イスにカラダを預けたまま、しばらく動かないでいる・・・だらりと両腕を落とした時間に、乾いた風がさっと吹き抜けていく。まぶたを閉じた上で、ヒグラシが鳴いていた。