軽二輪で行こう 6(完)

あれから10年以上が過ぎて・・・モトクロッサーに乗せれば、ワタシよりも速くなったryoは、二輪の免許を手に、独り名古屋へツーリングに出るまでになった。ソロツーリングの終わり、飛騨高山から山伝いに渋、草津へとたどる二日間を、XR230とEXC-R250で過ごしたのが、去年の夏。あのときのものはすっかり無くなってしまったけど・・・想いだけは消えずに、ずっと残されている。それが、舞い散る光にフラッシュバックされて、脳裏に浮かび、はっきりと像を結んだ。

突き抜ける透明なまぶしさ・・・地上2000mでは、太陽から落ちる乾いた光が、マシンの周りにあふれかえる。立ち枯れて灰色の木々は真っ青な空に刻まれて、底なしの青の上、太陽だけが白く光っている。照り返しばかりが瞳に映り込み、だんだんと網膜がしびれてくる。真夏にだけ許された光の世界・・・そこには、二輪こそがよく似合う。

公道を走る相棒が居ない、初めての夏。そして、手が届く“範囲”で並ぶ軽二輪の数々。9月になって,ようやくやって来る遅い夏休みまで、眩い光に心惑う日々が続くのかもしれない。35℃の中、コーナーを折るたびに肌が冷たくなっていく優越を思い出しながら。もう一度、二台で駆けるのを密かな楽しみにして。