真夏の祭典Ⅱ 2

スピーカーからコースに向かって、ワタシだけの“テーマ”が流れる。曲はもちろん“Rock and Roll All Nite”。あふれる光の中、気分は最高だ。ドンドチャカ、ドンドチャカ♪と刻むドラムに合わせて、ヘルメットの上、両手で拍を打つ。チェッカー係のsatakeさんが、一番わかった顔で足踏みしている。「Strutterが好き」だなんて、なかなか聞ける台詞じゃない。ココでそんな会話を楽しめるのは、ワタシとsatakeさんぐらいなものだ。“I wanna rock and roll all nite, and party everyday”、4人のコーラスをなぞるように口ずさんでいると、スターターのiguchi師匠が、右腕を回し始めた。エンジン始動の合図だ。一気に排気音が破裂して、ジーンの声がかき消される・・・。

今日はずいぶん離れたところまで走っていってから、“15秒前”のボードを頭上に掲げる師匠。前回もそう、KISSのおかげで、心臓の音が喉元で響くようなこともなく、静かにスターティングバーを見つめる。すぐ左で車体を前後に揺らすkiuchiさんに気を取られていると、ボードが“5秒前”に翻った。伸ばした背中を腰から折り曲げるようにして、上半身をハンドルバーに近づけていく。そして、バーが手前に倒れ切るより早く、左の人さし指がクラッチレバーを離したはずだった・・・。

<つづく>