アラバスタに雨が降る

国道16号線が6号線と交差する「呼塚」の陸橋をくぐり、隧道を抜け、「大島田」の交差点を右に曲がる。すぐに通りの左側にRICO LANDの看板が見える。開店前なのに、“レンタルバイク”ののぼりがたち並ぶ駐車場には、散らばったマシンを囲むようにして4、5人のスタッフが円陣を組み、何やら話し、笑っていた。その脇をverisaで通り抜けて、県道「船橋取手線」、通称“船取線”をそのまま南に下っていく。数キロ進むたびに、「この先、渋滞しています」と、カーナビゲーションの音声が繰り返していた。

信号の数も多ければ、クルマの数も多い。ただ、完全に停まってしまう渋滞は無くて、流れに強弱がついている感じは、イライラするほどじゃない。東京湾へ向いたフロントガラスに、濃い灰色の雲が広がる。歩道に沿って伸び放題の緑が、風に大きく倒される。「雨が降りそうだな」と助手席に声をかけた瞬間、透明のガラスに、雨粒がはじけた。「雨だ!」。大粒の雨はいきなり落ちてきて、フロントガラスをにじませ、すぐに先が見えなくなった。ワイパーが拭う視界を、雨が覆う・・・。

渇いた大地が雨を吸う。陽に焼けた里芋の黄色い葉もしっとり濡れて、スプリンクラーの無力ぶりが露わになる。あっという間に雨が流れ出したアスファルト、クルマのタイヤが、白い二本の線を引いていく・・・。船橋までの緩い上り下りに、烈しく落ちる雨。verisaの屋根を叩く音が、運転席の耳に心地よく響く。「この音が龍ヶ崎にも届けば・・・」カチカチに固まった粘土質も、少しは緩んでくれるはずだ。「アラバスタに雨が降る」・・・ワンピースの一幕が頭に浮かぶ。ひさしぶりの雨・・・待ち望んだ雨は、明日も大地を舞うのだろうか・・・。