真夏の祭典Ⅱ 6(完)

フープスは並びかけただけ・・・バックストレートエンドでインを締められて、ダブルジャンプで少し背中をたぐり寄せても、まだ後ろにいる。あとはスネーク・・・だけど、ワダチ嫌いが勝負できる可能性は小さい。それでも何とか離れずスネークヒルを駆け上がり、ラインをわずかに変えて最後のコーナーへと下る。新しくできた右のヘアピンで、やっぱりインを衝いたYZ。その外側にRMを並ばせて・・・イチかバチか、最後に仕掛ける。

バンクのないアウト側ギリギリに立ち上がるはずだった・・・それを知って知らずか、すっと音もなく、RMの前に青い影が近づいてきた。一瞬、スタートがフラッシュバックして、右手が動かなくなる。万事休す・・・急いで内側にフロントタイヤを倒して、精一杯の加速を試してみても、届くわけはなかった。フィニッシュラインを越えて、最終コーナーのバンクまで行って、ようやく車体が勢いを無くす。背中から視線を外せなかったのが、悔しい。せめてあと一周あれば・・・もう少し緊迫した見せ場が作れたかもしれない。負け惜しみがこぼれないように、ぐっと下唇を噛んでパドックへと戻っていく。午後の太陽は、相変わらず空の高いところにあって、眩しい光りを降らせていた。

表彰台の一番高いところからレースを振り返り、「後ろから来てるのがわかったから・・・譲れないよ」。nagashimaパパに名指しされたのが、とても誇らしくて・・・そんなことを思う自分が、ちょっぴり恥ずかしかった。次の最終戦は、真冬のMX408。太陽を味方につけられないけど・・・ちょいとイイ走りができそうだ!